星崎家に来客があったのは、ミズキが大 学から帰宅して30分も経たないうち だった。
メイはイベント準備のためまだ専門学校 にいるし、菜月はパート帰りにスーパー に寄ると言っていたから、すぐには帰っ てきそうにない。
今、この家には、ミズキ一人……。
また樋口がやってきたのだろうか。
ミズキはこわばった顔でドアスコープを 覗くと、樋口ではないが、それではない 見ず知らずの男性の姿があり、新たな緊 張を覚えた。
悪そうな人には見えないが、良い人かど うかなんて見た目だけでは分からない。
初めて樋口の応対をした時のように、ミ ズキは恐る恐る玄関の扉を開けた。
「突然の訪問、すみません。
こちらは、星崎さんのお宅でしょう か?」
水色のシャツが似合うスーツ姿の男性は そう言い、ミズキに申し訳なさそうな視 線をよこした。
玄関先には《星崎》と刻まれた表札があ るのに、わざわざそんなことを口にする なんて。
この人は、樋口よりおおらかな大人なの だろうか。
ミズキは初対面の男性に、そんな第一印 象を持った。
「はい、ウチは星崎です。
あなたは……?」
ミズキが尋ねると、男性は言いにくそう に切り出した。
「……最近こちらに、樋口っていう男が お邪魔していませんか?」
「はい……! 白猫を探してた人ですよ ね」
「やっぱりそうだったんですね……!
私は、樋口の幼なじみなんです」
「樋口さんの?」
思わぬことを告げられ、ミズキはまたも や緊張感を持った。
この男性は、樋口とはだいぶ雰囲気が違 うが、樋口の仲間かもしれない。
樋口と共に、メイがかくまっている猫を 探しているのかもしれない。


