春の日没は早い。
明るいうちに効率良く探さなくては。
リクは、先日子猫を保護してくれた女性 の家を訪ね、まだ見つかっていない猫の 情報を求めてみたが、収穫は得られな かった。
この辺りでもっとも広い公園をくまなく 探したが、やはり、見つけることはでき なかった。
“明日はシュン君の誕生日会だし、これ 以上、遅くなれないよな……”
夕日が夜の藍色に押し流された頃、リク はしぶしぶ帰宅することにした。
メイになついていた猫が、これだけ探し ても見つからないなんて――。
リクは、不穏な何かを感じた。
駅に向かう途中、もう一度星崎家の前を 通ろうとリクが歩を進めると、工場作業 員らしき中年男性の姿が目に入った。
外灯の白い光が部分的に照り付ける道 で、男の表情がはっきり見える。
“あの人、何してんだろ?”
不審に思い見入っていると、リクは男と 目が合ってしまった。
相手は、こちらに向かってやってくる。
リクは男性の視線にからめとられたかの ように硬直した。
鳥肌が立ち、リクは寒気を覚える。
なぜなら、男は星崎家に入るでもなく、 ただひたすら、星崎家の玄関を見つめ、 気味の悪い笑みを浮かべていたからだ。
“……こいつが、樋口?”
直感した瞬間、リクは男に声をかけられ た。
「ねえ。この辺で、白い子猫3匹、見な かった?」
リクの事をこの辺の住民だと勘違いして いるのか、男は憮然(ぶぜん)たる面持 ちでそう質問した。
「……ああ! その猫なら、最近この辺 で見ましたけど、誰かに拾われたらしい ですよ」
リクはとっさに、ウソをついた。
「見るからに捨て猫って感じだったし、 放っておくのもかわいそうだから、っ て……。
あなたの探してる猫かどうかは、分から ないですけど」
「引き取った人って、星崎さんちじゃな い?」
「違いますよ。俺、昨日星崎さんちに遊 びに行ったんですけど、猫なんていませ んでしたよ」
この男に本当のことを話してはいけな い。
リクは、頭の奥から警告音が聞こえた気 がした。


