幸せまでの距離


今頃メイは、保護した子猫達の相手をし ているだろうか。

それとも、夕食を口にしつつ、ミズキ達 と家族の団欒(だんらん)をしているだ ろうか。

目的の住宅街に着くと、リクはつい、そ んなことを考えていた。

と、同時に、明日シュンの誕生日会でメ イと再会するのが待ち遠しくもある。

メイに会ってどんな態度を取ればいいの か、今までこういう状況になったことが ないので分からないが、それでも、メイ に会えるのはどんな形であれ嬉しかっ た。


姿を消した親猫は、子猫を探すため、再 び星崎家にやってくるだろう。

そう読んだリクが、星崎家所在地を中心 に周囲の探索を始めようとしていると、 背中から男性に声をかけられた。

「ちょっと、いいかな?」

「はい?」

リクは振り向く。

そこには、30代前半と思われるスーツ 姿のサラリーマンが立っていた。

スーツの前ボタンを全部外し、中に着て いる水色のシャツがあらわになってい る。

「この辺りに、星崎さんという女性の家 があるはずなんだけど、君、知らないか な?」

彼はリクに、星崎家の場所を尋ねてき た。

「わかりますよ、こっちです」

ここから歩いてすぐなので、リクは彼を 星崎家まで案内することにした。

男性からは怪しそうな雰囲気など漂って こず、むしろ爽やかエリートの風だとリ クは思った。

頼りがいのありそうな勇ましい視線と丁 寧な話し方が、この男性によく似合う。

容姿からして、若い頃に限らず、現在も 女性からの人気が高そうである。

あからさまに不審な人間だったら道案内 などせず、むしろ「星崎さんなんて知ら ない」と無視をしていたところだが、リ クは男性に警戒心を抱かなかった。

男性は心底困った様子なので、それを放 置するのも悪い気がした。


「ありがとう、助かったよ」

星崎家に着くと、男性はリクに頭を下げ る。

「このくらい、全然いいですよ。じゃ あ」

男性を案内すると、リクは再び探索へと 足を戻した。