幸せまでの距離


なぜ、リクがそのように前向きかつ冷静 な考え方ができるようになったのかと言 うと、それは、周囲の人達の影響だっ た。

長年、家族関係に苦しんで、自分を傷つ けてきたショウマ。

父親と死別し、母親と寄り添い合って生 きる健気なアカネ。

二人と関わることで、リクは自分の内面 を振り返ったり、立ち止まり、深く悩ん だり、自分の立場を客観視しながら、流 れる時間に身を置いていた。

メイに会えない暮らしの中で、こう思っ た。

ショウマやアカネは、一見、他人から見 たら不幸せな境遇にいるかもしれない が、必ずしもそうではないのではない か、と……。

リクがそうだったように、その二人も、 日々の苦しい出来事に直面したからこ そ、他の人には見られなかったものを胸 に刻めたし、平穏な暮らしでは手にでき ない優しさやたくましさ、強さを身につ けたのではないだろうか。

ショウマは義父を反面教師にして、自分 は子供に対し優しい大人でありたいと 言っていた。

アカネも、大切な肉親を亡くしたからこ そ、自分の恋よりメイの精神を労ってく れたのだと、リクは思っている。

痛みや苦労を知らず、楽して望みを叶え 恵まれた環境にいたら、人は自分の能力 に自惚れ、横柄になる。

リクはそう思えてならなかったし、だか らこそ、自分が不完全な人間で良かった と思える。

欠点が多く、自分の弱さを見つめられる からこそ、他者を……メイを思いやる心 が育まれたのだから。

メイとの間に何が起きても、動じない。

つらい出来事に直面しても、いじけたり 後ろ向きにならないように、リクは自分 を戒めた。