幸せまでの距離


大学帰り、リクは一人、猫を探すため星 崎家の位置する住宅街を目指した。

ショウマも同行すると言っていたが、リ クはあえてそれを断った。

ショウマには、今までたくさん助言をも らい、背中を押してもらった。

これ以上甘えてばかりいては、自分がダ メになる。

傷つきやすく弱い心を持ち、メイのトラ ウマにも気付けなくて、ただ、周りに反 発ばかりして気ままに生きてきた今まで の自分。

リクは、短所だらけな自分を自覚し、た だうんざりするだけだったが、最近、そ の思考も変わってきた。

“俺は、今の自分でいいと思うし、今よ り成長したいとも思ってる”

絵に描いたような完璧な人間に、憧れを 抱かないと言ったらウソになる。

生まれながらにメイに受け入れられるよ うな、パーフェクトな男でありたかった と、上ばかり見ていたのもたしかだ。

けれど今は、そんな気持ちに苛まれて悩 む必要はないと思っている。

自分が自分であるために、

この先もメイと関わり続けるために、

今までの自分は必要不可欠だったのだ と、リクは感じている。

“よく、人生に無駄なことなんてないっ て言うけど、その意味が、やっと分かっ た気がする”

リクは、橙色の空を仰いだ。

“もし、生まれながらに完璧な人間だっ たら、

メイに振り向いてもらえるような男だっ たら、

俺は、間違いなく傲慢(ごうまん)なヤ ツになってたと思う。

それで、今以上にメイを遠ざけてたかも しれない”

もちろん、今の自分が優れているなどと は一切思わない。

けれど、ダメな男と言い捨てるほど低い 価値ではないはずだ。