幸せまでの距離


シュンの誕生日会を明日にひかえた今 日、4月26日の午後。

メイとミズキは学校を終え家に帰ると、 メイの部屋で二人一緒に猫の遊び相手を していた。

猫達は、すぐさまミズキにもなついた。

「可愛いね……!

やっぱり、写真やテレビで見るのとは違 うね」

ミズキはうっとりして、猫を一匹一匹、 大切に抱き合げ、頬擦りする。

「当たり前だよ、触れるんだから」

メイは言い、ミズキが抱いている子猫の 手をつまんだ。

シリコン製のねこじゃらしや、毛糸で出 来たマリを使って猫と戯れていると、イ ンターホンが鳴った。

穏やかな空気ははりつめ、ミズキはドキ リとする。

「もしかして、樋口さんじゃ……」

菜月がパートから帰ってくるのは、もう 少し後。

「メイは、ここにいて」

猫のためにミズキはそう言い残し部屋を 出ると、一階の玄関に降りた。

空は、茜色の夕日でまんべんなく染めら れていた。

風も冷え、もうじき夜になる。

ドアスコープを確認し、ミズキが玄関の 扉を開けると、オレンジに赤をにじませ た夕日が玄関に差し込んできた。

「どうも」

仕事帰りの樋口が、しびれを切らしたよ うに低い声を出した。

逆光を浴び、樋口の表情はよく見えない が、ミズキはそれに救われる思いだっ た。

「樋口さん……。

毎日来てもらってるのにすみませんが、 猫はまだ来てません」

ミズキは平静を保った。

またしても樋口は星崎家にやってきて、 ミズキに猫の行方を尋ねてきた。

「おかしいですね。

前にも言いましたけど、ウチの猫が、 しょっちゅうここに出入りしてるって、 近所の人も言ってたんですが……」

さすがに、ここまで来てウソをつくのは 無理があったか。

樋口はもう、ミズキのことを疑い始めて いる。

猫達はここにいるに違いない、と、確信 しているように。

「たしかに、前はよくウチに来てたの で、そう思われても仕方ないですよね。

でも、本当にもう、来なくなったんです よ。

てっきり、樋口さんの元に帰ったんだ と、安心してたくらいです」

ミズキはそれらしい口ぶりで、さも本当 にそう思っていたように感情を込めて話 した。