夕食を終え入浴を済ませると、メイは珍 しく自分の部屋に直行した。
いつもなら、ミズキと一緒に寝るべく彼 女の部屋に向かうのだが、今日からは子 猫3匹も家族の一員である。
樋口のことを思い出すと腹が立つし、正 式に猫を引き取れたわけでないのは気が かりだが、自室にいる猫達を見ると、メ イは幸せな気持ちになった。
自分の夕食前に猫にもエサを与えたの で、今日の世話はもう終わりにしていい のに、やはりメイは、猫の様子が気にな り見入ってしまう。
メイがやってきたことに気付くと、猫達 はしゃがむ彼女の足元にまとわりつき、 メイの指をなめたり、小さい頭を彼女の 足にこすりつけたりした。
すっかり、メイを親だと思っているの か、猫達はなかなかメイから離れず、彼 女にうんと甘えているようにも見える。
今までに感じたことのない、でも、遠い 昔に体験したことがあるようなあたたか い感情を覚え、メイは小さく笑みをこぼ した。
心から、猫達を愛しいと思う。
目一杯に可愛がり、一生、守りたいと思 う。
猫に触れ、その尊いぬくもりを感じるた びに、今まで自分に足りなかった名のな い情緒が満たされるようだった。
“私がこの家の養子になった時、ミズキ 達も、私を見てこんな気持ちでいてくれ たのかな?”
家族の一員。
自分にもやっと、その意味が理解できた ようで、メイは喜ばしい思いだった。
自分に、人としての価値を感じられない 時もあれば、こうして幸福の極みを味わ える瞬間もある。
メイは、これが等身大の自分なのだと、 受け入れ始めようとしていた。
その夜、メイは初めて、ミズキと離れ、 自分の部屋で眠ることが出来た。
ミズキは内心、メイが悪夢にうなされる 心配をしていたが、その心配もなく、翌 日メイはスッキリした表情でミズキに朝 の挨拶をした。
子猫は一晩中、メイのベッドを離れず、 眠る彼女と共に一夜を過ごした。
近くに子猫がいる。
それだけでメイは、安心して眠れたの だった。


