メイの隣に座るミズキは、彼女の想いを 感じ取ったように言った。
「人にはそれぞれ、自分には見えるもの と見えないものがあるの。
私もずっとそうだった。
誰が悪いとか、ない。
だからメイも、自分を責めることないん だよ。
猫を飼うって言った時のメイ、かっこよ かったもん!」
「うん……」
ミズキの言葉が、メイにはありがたかっ た。
目に見えない無数の傷に消毒がしみるよ うに、痛く、優しく、癒される感覚。
直後、家族の絆を感じられる穏やかな食 卓は、望まぬ来訪者によって中断させら れた。
夜8時に近い時間。
インターホンが鳴ると、菜月は怪訝な顔 をし玄関に向かった。
「誰かしら。こんな時間に……」
ミズキとメイも食事の手を止め、リビン グの出入口から菜月の姿を見ていた。
菜月が扉を開くと、そこには仕事帰りの 樋口の姿があった。
樋口は開口一番、
「猫、来てませんかね?」
「あなたは……」
樋口と面識のなかった菜月も、その鋭い 質問により彼が猫の飼い主だと察した。
「樋口さん、お話は娘達から聞いてま す。
身勝手なことを申し出ているのは重々承 知していますが、どうか、お願いしま す。
私達に、あの白猫達を育てさせて下さい ませんか?」
菜月は正座し、玄関に立つ樋口に向かっ てスッと頭を下げた。


