幸せまでの距離


カナデのように、動物に一途な愛情を注 ぐ飼い主ばかりだったらどれだけ良いだ ろう。

「平気な顔で、自分のペットを保健所に 連れてくヤツもいるよね」

メイはやる瀬ない思いでそう言った。

樋口のことを思い出すと、どうしても、 そう口にせずにはいられない。

カナデはうなずき、同意を示しつつも、

「まあ、それはひどいけど、仕方ない場 合もあるよ。

ウチの近所の人で、飼ってた犬を泣く泣 く保健所に連れてった人もいるし」

「泣く泣く……?」

「うん……。その犬、目を離したすき に、家で留守番してた3歳の子供の指を 噛んで病院送りにしたんだって。

だから、仕方なく」

「そうなんだ……」

黙り込んだまま、それぞれに沈思してい たが、そのうちカナデが明るく空気を変 えた。

「猫用の物で必要な物があれば、いつで も言ってね?

昔ウチの猫が使ってた器とか、物置にし まってあるはずだから。

昔のだけど、ほとんど使ってない新しい やつだから、大丈夫だよ。

全部買いそろえると高くつくし」

「昨日買ったから、もういいよ」

メイは断ったが、

「オモチャとかトイレはすぐボロボロに なるから、何個あってもいいと思うよ」

と言うカナデに押し切られ、放課後、猫 用品をもらうべくカナデの家に寄ること になった。