幸せまでの距離


「好きの気持ちと嫌いの気持ちは、同居してる……?

好き嫌いって、してもいいの?」

リクは目を丸くする。

ショウマは「ああ、いいんだよ」と短く言い、

「少なくとも俺はそういう感じだから、リクも、俺に対しては言いたいこと言えばいい。

リクんとこも、親との付き合いが何かと面倒そうだけど、そこは適当にやり過ごして。

大学ではリクらしくいたらいい」

「ああ……わかった!」

二人は互いにこぶしを作り、それを軽くくっつけ合う。

新しい出会いと、新しい友達。

リクは胸を弾ませる。知らない人ばかりの大学生活も、楽しくやっていけそうだ。

ショウマもリクと同じ気持ちなのだろう。

講堂内で初めてリクと会話した時とは違う穏やかな面持ちで、こう尋ねた。

「リクは、もう帰るの?」

「うん。約束があるんだ」

「約束?」

ショウマは一度そうつぶやいた次の瞬間、クスッと笑い、

「もしかして、彼女?」

「んー。なんていうんだろ。

まあ、そんな感じ?」

リクは苦笑いをし、あいまいに返す。