樋口とのやり取りでささくれ立っていた メイの神経も、猫を見つめることで癒さ れていくようだった。
まだここにいない親猫と子猫1匹が、そ ばにいるかもしれない。
立ち上がり、メイは芝生の庭を見て回っ たが、もっとも彼女に懐いていた親猫の 姿はここになかった。
「なんで、子猫だけ……?」
そんな疑問がもれた。
カゴはメイのヒザほどの高さがある。
親猫なら飛び越えられるかもしれない が、子猫が自力で入るには無理がある。
樋口が連れてきたのか?
“まさか、それはないだろ”
浮かんだ推測を瞬間で打ち消し、メイは 考えた。
残り1匹の子猫と、親猫はどこにいるの だろう。
親猫が子猫をここに連れてきたと考えら れなくもないが、やはり気になる。
今は長らくこうしているわけにもいかな いので、無事に戻ってきた子猫を自室に 運ぶと、メイは猫用トイレの準備をして 学校に行く支度を済ませた。
メイより遅れて目を覚ましたミズキは、 眠そうな目をこすっていたが、メイのあ わただしい様子を見て一気に眠気を飛ば した。
「猫、きてた……?」
「3匹だけ。カゴの中にいたよ」
「そう、よかった」
ミズキは胸をなでおろし、急いで学校に 行く準備をした。
菜月はすでにパートに出ている。
二人はそれぞれ学校に遅刻したが、猫が 見つかったことで、急ぎ足な通学中でも 気分は穏やかだった。


