幸せまでの距離


メイを大切にすることと、自分の日常を 犠牲にすることは違う。

将来の夢を叶えるためにも、サボらず大 学に行くと決めたリクだったが、早くも 彼の決意は揺れていた。

自分のことを差し置いても、メイのため に動きたい――!

メイのトラウマを知った時から、その想 いはさらに強くなった。

“もし今、自分のことを優先させたら、 俺は後悔する……!”

そんなリクに助け船を出すかのように、 タイミング良く猫の鳴き声が聞こえたの は、その直後だった。

壁越しに伝わってくる、まだ幼い猫の、 柔らかく高い鳴き声。

たった今、リクが通り過ぎた住宅の玄関 先から、それは聞こえてくる。

“猫……!!”

リクは足を止め、鳴き声のする住宅の扉 を凝視した。

しばらくするとあわただしい足音が聞こ え、中から扉が開かれた。

「裏の公園に置いてくる!」

そう言い、外に出て来たのは、両手でフ タの無い段ボール箱を抱えた30~40 代の女性。

リクは彼女と目が合い、箱の中に“居 る”ものを直感した。

「あの! その箱の中って……」