幸せまでの距離




元来た道を戻りつつ、リクは周囲の景色 に目をこらした。

“絶対、このへんにいるはず。

猫は、メイになついてたんだか ら……!”

彼が家を出てから、早3時間が経過しよ うとしている。

ミズキから聞かされていたような猫は見 つからず、まるでその存在をかき消すか のように朝の風景が流れ始めた。

通勤するため駅に向かう大人達。

学校に向かうべく歩を進める小中学生 や、自転車をこぐ高校生。


探索を始めた頃は静かだった早朝の道 も、じょじょに、リクのよく知る朝の雰 囲気に染まっていく。


100メートル先の交差点を曲がったら 星崎家が見えるという住宅街の歩道にさ しかかった時、リクはショウマからの メールを受信した。

《今日、遅刻?

もうすぐ講義始まるよ。

リクが遅刻って、珍しい!》

いったん猫の画像をしまい、リクは返信 メールを打った。

《遅刻するかも!

2時限目から出る!》

簡潔にそう返し、再びケータイ画面に猫 の写真を表示させる。

「思わず遅刻するって言っちゃったけ ど、どうしよう……」

目的も果たせないまま学校に行く気には なれなかった。

猫が見つからなかったことを、ミズキに 連絡するべきだろうか……。