幸せまでの距離


帰宅するなりメイは、購入した物をすぐ さま自室に運んだ。

部屋から余分な物をどけ、猫が生活でき るスペースを作る。

猫なのだから、放し飼いにしてなるべく 自由に行動させてあげたいが、樋口が猫 をあきらめるまで、外に出すのは危険な 気がする。

猫が退屈しないよう、多少のおもちゃも 買ってある。

ミズキも手伝い、なんとかメイの部屋の 一角に猫用空間が完成すると、早くも夕 方を過ぎていた。

月の綺麗な、その日の夜。

ミズキとメイは、パートから帰宅し夕食 作りをしている菜月に、猫のことを話し た。

相談というより、決定事項を報告する形 になってしまったので、菜月は大層驚い た。

調理の手を止め、菜月はメイの部屋に向 かう。

すると、すでに猫が住める環境が整って いるではないか。

菜月は動揺し、

「メイの気持ちは分かるけど、強引過ぎ ないかしら。

飼い主の方は、猫を返してほしいと言っ てるんでしょう?」

「でも、あの男、おかしいよ」

メイはすかさず主張した。

「お母さんも、あいつを見たら分かる よ……。

お願い。ちゃんと育てるから、協力し て……!」

メイは頭を下げ、必死に頼んだ。

あの猫を、どうしてもこの手で育てた い……!