幸せまでの距離


メイの考えはこうだ。

あの様子だと、樋口は再び星崎家に訪問 してきて、猫の行方を尋ねてくるだろ う。

メイが彼に反発した以上、こちらが下手 に動けば、樋口は攻撃的にしつこく責め てくるはずである。

ミズキは樋口を説得し、猫を譲ってもら おうとしているが、彼の感情を見たら、 現状、それは難しいだろう。

白猫が帰ってくるやいなや、樋口は星崎 家にやって来て、子猫もみんな連れて いってしまう。

その前に、猫を家の中に匿(かくま)う 必要がある。

樋口が来たら、「白猫は来なかった」と ウソをつけばいい。

メイに協力する気は充分あるが、やはり ミズキは、順調に進む気がしなかった。

「うまくいくといいけど……」

メイが反発した瞬間、樋口はわざとらし い悪口を言い、メイを煽(あお)った。

ああいった陰湿なタイプの人間は、敵に 回すと厄介である。

何かと、妨害されかねない。

「先のことを考えても、樋口さんが説得 に応じてくれるなら、それが一番いいん だけど……」

メイの作戦に反対する気はないが、樋口 の人間性を見抜いたミズキは、そんな保 守的思考を捨てられなかった。