幸せまでの距離


人間同士が関わり合うのと、人間と動物 が触れ合う光景は、とてもよく似てい る。

メイは、そう受け止めていた。

彼女が動物と触れ合ったのは、小学生の 頃、飼育係を勤めた時以来である。

猫の育て方に関する知恵や知識も持ち合 わせていないが、これから覚えるつもり だ。

過去のわずかな経験から、触れること で、動物にこちらの感情を伝えられる気 がした。

「あの猫達、寂しさを紛らわしたくてウ チに入ってきてたんだ、きっと……」

「……うん。そうだね。

あの子は、樋口さんがしようとしてるこ と、察してたのかもしれないね……」

ミズキも言い、うなずいた。


樋口に首輪を外された時、親猫は自分が 捨てられたことを感じ取ったのかもしれ ない。

一方で、樋口がここで保健所の話をして いたことなど、猫達は想像もしていない のではないだろうか。

「もし樋口が保健所に行かず、親猫を育 て続けるんだとしても、子猫は他人の家 に連れてかれる……。

親猫がひとりぼっちで産んだ子なのに、 あんまりだ……」

うつむくメイの目は潤んでいる。

樋口の話が本当なら、親猫は樋口の家を 出た後、星崎家にたどり着く前に、どこ かで出産を終えたことになる。

メイの心情をくみ、ミズキはうなずい た。

「……メイ、ごめんね。

メイがあの子達を育てられるように、私 も協力する。

私達に猫を育てさせてくれないか、樋口 さんに相談してみるよ」

「あの男を説得できなかったら、犯罪の 片棒を担ぐことになるよ。

それでもいいの?」

ミズキは穏やかに笑む。

「猫を返さないのが罪だって言うなら、 猫を殺処分するのも、重たい罪に当たる よね。

メイの言う通り、動物の命を軽く考える のは人間のエゴ。

だったら、みんなが幸せになるための罪 を選ぶよ。

樋口さんが安心出来る人って思えない限 り、私もメイと同じ考えだから」

ミズキのそのセリフは、メイの猫隠しに 協力することを示していた。

「樋口さんが来る前に、あの子達がここ にやって来てくれるといいけど……」

ミズキはやや不安そうに眉を下げる。