メイは今、強く思うのだ。
メグルの祖母・清に愛情をもらっていな かったら、
故人・リョウの手紙を読んでいなかった ら、
星崎家の養子として歓迎されていなかっ たら、
今頃、自分はさらに凶悪な犯罪を重ね て、それでも、『生きる手段だから、こ うするのはやむを得ない』と、理不尽な 世の中を攻撃し、周囲の人々を無差別に 傷つけ、開き直って生きていただろう。
メイは自分の両手のひらを見て、言っ た。
「……きっと一生、この気持ちは消えな い。
専門学校を卒業して、好きな仕事に就い ても」
今まで、この手で何人の人生を狂わせた のだろう?
どれだけの人の心に、消えない傷を刻ん でしまったのだろう?
「だからこそ、私はどうなってもいい。
ヤケになってこう言ってるんじゃない」
メイの冷静さが、ミズキには悲しかっ た。
「自分の幸せなんて、つかめなくたって いいんだ。
あの猫を守るためなら、この身がどう なったってかまわない。
猫を匿(かくま)うことで樋口に通報さ れるなら、望んで受けて立つ」
「樋口さんの元に猫を帰らせるのは、私 も不安だよ。
猫達の命も、軽く見たらいけないと思 う。
でも、メイだって、ひとつの尊い命なん だよ。
今を大切に生きなくてどうするの?
罪を悔いることと、幸せを諦めるのは、 違う!
まったく、別問題だよ……!」
メイに思い直してほしくて、ミズキはそ う強く訴えたが、彼女の言葉はメイに届 かなかった。
「ミズキには、捨てられる側の気持ちな んてわからない!」
「メイ……!?」
「そういうことでしょ?
ミズキは、今、命の重さを比べた!
猫より私の命が重たいんだって……!
そんなの、人間のエゴだ……」
「私、そんなつもりじゃ……!!」


