幸せまでの距離


いざとなったら、樋口はこう主張し、自 分を正当化するはずだ。

『大切なペットを、頭のおかしい他人に 取り上げられた』

経過を知らない警察や他人は、結果だけ 見てメイを悪人とし、樋口に同情するだ ろう。

ミズキには、そんな未来がありありと見 えた。

今まで苦労してきた分、メイには幸せに なってほしい。

だからこそミズキは、樋口が怪しくて も、それを問い詰めずメイを守ることだ けを考えた。

しかし、その想いはメイに正しく伝わら ず、逆に彼女の神経を逆なでするだけに 終わった。

「私はもう、犯罪者だから」

メイは無表情に言った。

「リョウを追い詰め、死に追いやったの は、他でもない、私」

「違うよ! メイが殺したんじゃない!

あれは……。悲しいことが重なってし まっただけなんだよ」

「……直接手は下してない。

でも、全ての原因は私にあるんだ」

「そんな風に思ってないよ……」

ミズキの目は潤んでいた。

伝えたいのに、伝わらない。

どうしたら、この想いをメイに伝えるこ とができるのだろう。

もどかしくて、何もできないのが悔しく て、涙がにじんでくる。

けれど、涙を流してしまっては「泣き落 とし」という卑怯な手段になる気がし て、寸前のところで懸命にこらえた。