幸せまでの距離


メイはミズキに訊く。

「あの男、おかしいと思わなかった?」

「思った。メイが飼うって言った瞬間、 自分が引き取るって言い出したり……。

保健所に連れてくって言ってたクセに、 矛盾してるよね」

「でしょ? 絶対、あんなやつの言いな りにならない」

メイは決めた。

樋口は、都合が悪くなると逃げるクセの ある人間だ。

彼の話しぶりや、帰り際の取り乱しよう を見て、メイはそう判断した。

ミズキは動揺し、メイを止めようとす る。

「たしかに、樋口さんは無責任だと思 う。

妊娠した猫を保健所に連れてくって考え も、異常に感じた」

特に、女性のミズキにとっては、動物の 妊娠も人間のそれと同じくらい尊い奇跡 だと感じているから、なおさらだ。

「でも、子猫は樋口さんの友達に譲るっ て言ってたし、去勢手術もするっ て……。

これからの樋口さんを信じてみよう?」

樋口を信じる気持ちになんてなれない が、ミズキはそう言う他なかった。

メイが、樋口と口論になるのはまずい気 がして……。