樋口は、何か変な考えを持っている。
そう感じたメイは、言い切った。
「あんたみたいなヤツに、あの猫は返さ ない」
「星崎さん、いったい何を……?」
動揺する樋口にかまわず、メイは言っ た。
「あんた、さっきからコロコロ言うこと 変えて、何がしたいんだよ。
変な考え持ってるんじゃないの?」
メイの発言が心外だったのだろうか。
樋口はみるみる顔を赤くし、首まで紅潮 させ、怒りをあらわにしたが、相手が未 成年なだけに妙な強気が顔を出したのだ ろう。
彼はメイを小バカにするような言い方を した。
「あのねぇ! それはさっきから説明し てるでしょ?
大人だったらすんなり理解できるはずな んですが。
やっぱり、今時の若い人は頭が足りない んですかね?
変なこと考えてんのは、むしろそっちで しょう」
メイはひるまず、無言で樋口をにらみ続 けている。
反抗的なメイの態度を前に樋口は唇を震 わせ、最終的には怒鳴った。
「あなた、何を言ってるか分かってま す?
人んちの猫を返さないって、犯罪です よ!!
あの猫は、子猫も入れて全部、こっちの モンです!」
「面倒見切れないからって殺処分しよう としてたクセに、今さら飼い主面すんな よ」
荒れた内面が顔を出す。
メイの口調は、自分では抑えられないほ ど乱暴なものになっていた。
「ああ、そうですか!
好きにしたらいい。
でもね、言っておくけど、猫を隠したり 返さなかったりしたら、警察に言います からね!!
そしたらあなた、捕まりますよ?
それだけはお忘れなく!!」
樋口はメイの手を振り払い、足音荒く、 星崎家を出て行った。


