ショウマは興奮するリクをなだめるように、リクの肩を軽く二回ほど叩いた。
「まあまあ。リクを見てると飽きないな。
感情豊かで、かわいい」
「かっ、かわいい!? それ、嬉しくないからっ!
しかも、かっこいいショウマに言われると限りなくイヤミに感じるっ」
リクは目を白黒させ、頬を膨らませると、雑誌のモデルとして活躍していてもおかしくないショウマの顔を見た。
まっすぐで、ささいなことに怒ったり喜んだりする。
そんなリクの仕草や口調が、ショウマの心を明るくした。
ショウマは「ごめんごめん。バカにする気は全くないよ。童顔だけどリクもイケメンじゃん」と、笑い涙を浮かべ、
「俺んちも、そうだったから。
リク見てると、小学生の時の俺を見てるみたいで、なんかくすぐったくて」
「小学生かよっ。
っていうか、ショウマんちの親も、教育ママ的な感じだったの?
ウチの場合は父さんの方がうるさいけど」
リクが尋ねると、ショウマは軽くうなずき、
「うるさいってモンじゃないよ。
大学入ってからこうして一人暮らしができるようになって、せいせいしてる。やっと解放された~ってね」
「ショウマは、親のこと嫌いなの?」
リクは遠慮がちに訊(き)く。
ショウマはリクの質問には答えず、少しの間を置いてこう口にした。
「……リクはさ、『好き嫌いはいけない』っていう大人達の教えを、おかしいと思わなかった?」
ショウマは物心がついた時から、呪文を唱えるかのようにそう言う大人達を、不思議に思ってきた。


