幸せまでの距離


ミズキも同じく不愉快な気分になった が、顔には出さず、冷静に質問を重ね た。

「あの猫は、樋口さんもご存知の通り、 メスですよね。

不妊・去勢手術をしないと、また、妊娠 するかもしれません。

そうなったら、また、殺処分するんです か?」

「ああ、そうですよね!

そこ、心配させちゃってますよねー?」

樋口は快活に笑い、女性二人とは正反対 の軽やかな口調で答えた。

「大丈夫ですよ。

星崎さんの言う通り、去勢手術をします から。

そしたら妊娠を防げますし、殺処分する こともありません」

樋口の明るさに気持ちが引きつつも、ミ ズキはようやく安心でき、

「そうですか。

では、見つかったら連絡するので、大切 に育ててあげて下さいね」

と、樋口を玄関の外に送り出そうとし た。

彼がドアノブに手を伸ばした瞬間、メイ は険しい顔で樋口の肩をつかんで彼を引 き止めた。

「あんた、何考えてんの?」

メイから投げかけられた質問に、樋口は 無表情で足を止める。

「メイ……!」

ミズキも、メイの言動に戸惑った。