幸せまでの距離


メイが樋口を怪しんだのは、彼の言葉の せいだけではない。

ミズキやメイとの会話中、樋口は、右手 ににぎりしめたハンカチで、しきりにこ めかみの汗をぬぐっていた。

ガタイは良いが、肥満体ではない樋口。

汗をかく季節でもないし、むしろ玄関先 は寒いくらいだ。


この男、何かを隠している。

あるいは、良からぬことを考えている。

そう直感したのはメイだけでなく、ミズ キも同じだった。

二人はどちらかともなく目を合わせる。

先に口を開いたのはミズキだった。

「こんな言い方失礼かもしれません が……。

樋口さんは、本当にあの子を育てられま すか?」

「と、いいますと?

質問の意味が分かりませんなぁ」

樋口はニヤけ、わざとおどけた口調をす る。

それが、ひどくメイのカンに障った。

“なにこいつ。

気色悪い男……”

反射的に、昔、一緒に風呂に入った“あ の男”を思い出してしまった。