メイの質問をはぐらかし、樋口は口早に 言った。
「友人には、猫好きなヤツが多いんで、 大丈夫ですよ。
親猫はともかく、子猫なら、なおさら、 喜んでもらってくれるヤツも多いでしょ うし」
子猫は他人に飼ってもらう。
樋口のその言い分は分かったが、メイは どうもしっくりこず、更に質問した。
「……親猫はどうする気?」
「自分が育てますよ。
子猫の引き取り手が見つかれば、それで 良かったんで。
心配かけてすみません」
取ってつけたように、樋口は意見を変え た。
最初は腹に子を宿した猫を殺処分しよう としていたクセに、子猫が生まれたと知 るやいなや、樋口は子猫を知人に譲ると 言い出した。
だったら、始めから殺処分を考えず、親 猫の出産を待ち、子猫を友人・知人に譲 ればよかったではないか。
樋口の思考は転々としすぎていて、か つ、極端である。
メイは彼の言うことに違和感を覚えた。
それに加え、妊娠を理由に簡単に猫の殺 処分を決める人間が、これからも猫を大 切に育てていくとは思えない。
樋口の話を聞くまでもなく、あの親猫は メスだと、メイにも分かる。
今後、再び妊娠する可能性がある。
そうなったら、また、あの白猫を殺処分 するべく、樋口は保健所の扉を叩こうと するのではなかろうか。


