ミズキはぎこちない表情で樋口に訊い た。
「『そのうち捨て猫になる』?
どうして、捨てようとしてた猫をこうし て探してるんですか?」
リビングの出入口から二人の様子をうか がっていたメイも、ミズキと同じ疑問を 抱いた。
樋口は、捨てるつもりで白猫の首輪を外 したのに、いま、その猫を探している。
こうして昼休みを潰してまで探し回って いること自体、おかしい。
捨てるのにためらいがなくなるくらい猫 に愛着を持てなくなったのなら、探さず にそのまま放っておくのが自然だろう。
その方が、樋口にとっても好都合のはず だ。
樋口は視線を左右に泳がせた後、こわ ばった顔で答えた。
「そうなんですけどね。
やっぱり、無責任に捨てると、周囲の住 民に迷惑をかけてしまいますから。
動物って、捨てると無駄に増えますし ね。
なので、保健所に連れて行って、殺処分 してもらうために、こうして探すことに しました。
そうすることが、飼い主の責任だと思い ますし」
樋口は、そうすることに何のためらいも なさそうに平然とそう言った。
『無駄に増える』
一時でも猫を飼っていた人間の言うセリ フだとは思えない。


