幸せまでの距離


ミズキの反応に、樋口は食いつく。

「やっぱり、知ってるんですね!?」

「はい、知ってます。

よく、ウチの庭に入ってきてるの で……」

樋口は、この住宅街から少し離れた地域 に住んでいると話した。

「あの猫は、あなたのペットなんです か?」

ミズキが尋ねると、樋口は苦々しい顔で うなずいた。

「そうなんです。

ずっと、探してました」

自宅近くの工場に勤めている彼は、仕事 の昼休みを利用し、逃げ出した白猫を探 し回っていたそうだ。

そうしてようやく、この住宅街にたどり ついたと言う。

「昨日も、この辺りを探してたんです。

そしたら、近所の方から、コイツがこの 家に入っていくのを何度か見かけたと教 えてもらいましてね!」

樋口は声高らかに言い、プリントアウト した写真の中の猫を、デコピンするみた いにパチンパチンと二回、指で弾いた。

実物相手ではないにしろ、彼の動物に対 する仕草は荒いなと、反射的にミズキは 思った。