ミズキはドアスコープで来訪者・樋口の 顔を確かめた。
母・菜月の知り合いや友人でもないし、 近所の人でもない。
このあたりはわりと治安が良いが、い つ、空き巣や悪徳セールスマンが訪問し てくるか分からない。
樋口という名前に聞き覚えがないため、 ミズキはやや警戒しながらドアロックを 外し、扉を開いた。
扉の向こうには、中から確かめた通り、 恰幅(かっぷく)の良い男性が立ってい た。
工場などで働いているのだろうか、全身 長袖の作業着をキッチリ着込んでいる。
今は昼休みなのだろう。
40代と思われる男性・樋口は、胸に付 けた社員証をそのままに、ミズキに一礼 した。
「あの、最近、こちらにこういう猫が迷 い込んでいませんか?」
樋口はそう言い、パソコンでプリントア ウトされた動物の写真をミズキに見せ た。
「あ……!」
ミズキは思わず声を漏らす。
樋口の手にしている紙には、メイが気に かけている白猫親子の、親の方の姿が 載っている。
写真の中で凛と佇む猫は、今はない首輪 をしているし、毛並みも綺麗だ。
こうして星崎家を訪ねてくる辺り、樋口 はあの猫を相当大切に育てていたのだろ う、と、ミズキは考えた。


