幸せまでの距離


笹原に会う段取りを決めたところで、二 人は再び、パスタに口をつけ始めた。

「……私のこと、そこまで気にしてくれ てたんだね。

私自身、自分のこと放置してたのに」

「メイがそうやって放置してる分、私が 目をかけるから大丈夫だよ」

ミズキは得意げに片目をつむってみせ る。

メイは小さく微笑を浮かべ、

「いまの顔……」

言いかけ、やめる。

ミズキの口ぶりや仕草がリョウに似てい た、などとは、さすがのメイも口に出せ なかった。

「メイ?」

途中で言葉を切られ、ミズキは不思議そ うな顔をするので、メイは残りのパスタ を食べることでごまかした。


雑談もそこそこに食事を終え、皿を片付 けるためどちらかともなく立ち上がる と、インターホンが鳴った。

二人きりのダイニングに、軽やかなメロ ディーが大きめに響く。

星崎家に訪問者がやって来たようだ。

「誰かな?」

ダイニングを出て、正午過ぎのあたたか い日だまりが射すリビングを抜けると、 ミズキは玄関に向かった。

「はい、どちらさまですか?」

扉越しにミズキが尋ねると、中年男性の 声が返答した。

「あの、樋口といいます。

ちょっと、いいですか?」

樋口(ひぐち)と名乗る男の声は、野太 かった。

隔(へだ)たる扉のせいで、彼の声はな おさらくぐもって聞こえる。