母の口ぶりを見て、カナデは悟った。
“やっぱり、お母さんはトウマのこと良 く思ってないんだ……”
「トウマ君って、カナデがつらい時、支 えてくれるような人なの?
そんな人には見えないわ。
トウマ君は、自分のことばかりに目が いっているように見えるもの。
若い時なら『若いから仕方ないね』で許 されるけど、もうすぐ30になるんだか ら、ある程度、周りに配慮できる余裕が 欲しいわ。
いまのトウマ君は、カナデが窮地(きゅ うち)に陥ったら、アッサリ見捨てて逃 げそうな気がする」
母はそう言い、カナデとトウマの付き合 いに難色を示しているのだ。
トウマの何を見てそう評価したのだろ う。
カナデには母視点の言い分がよく分から なかった。
「カナデの意思を尊重したいし、付き合 うのには反対しないけど、将来のことを 考えるとね……」
カナデの母は気が早く、今からすでに、 カナデの結婚相手の心配をしているよう だ。
カナデは将来、生駒家の後継ぎになるこ とが決まっているが、両親の考えで、カ ナデのことは自由に育てた。
その分、将来カナデの夫(生駒家の婿養 子)になる男性には、教養や知識だけで なく、常識のある人を求めている。
それだけでなく、結婚生活の中で何が起 きても、生涯、互いを大切にしあえる パートナー。
それが、両親一致の絶対条件である。


