幸せまでの距離


リクはポカンとした顔で、

「日本を、変える?」

「……なーんて!! ビックリした?」

ショウマは物憂(ものう)げな表情を一変、失笑をもらした。

リクは目をパチクリさせ、

「いまの、冗談だったの?」

と、呆気にとられる。

ショウマはクスクス笑みをこぼして、

「たかが法学部の学生が、日本を変えられるわけないじゃん。

エリート街道まっしぐらな政治家ですら、それを実現できてないのに」

「……そうかな」

リクは、ふざけるショウマに真面目な表情を向けた。

「たしかに俺達は今日入学したばかりの一大学生でしかなくて、『日本を変える』なんて、たいそれた力、無いのかもしんない。

でも……。変えたいっていう想いが本物なら、いつか変えられるんじゃないの?

日本は無理でも、自分の周りからでも……!」

「リク……」

ショウマは、海に沈みゆく小船のように、リクの視線に吸い込まれそうになった。

リクは自分の熱弁にハッとし、謝る。

「そのっ……。ショウマが何を変えたがってるかを知らないのに、分かったようなこと言ってごめんっ。

今の忘れて!!」