幸せまでの距離


養子縁組成立後、ミズキはたまたま翔子 に再会し、彼女から再婚する話を聞い た。

そのことはメイだけでなく、菜月や大成 も知っている。


様々な人間で成り立っている世の中。

誰一人として、同じ考え方を持つ人はい ない。

だからこそ争いが起き、憎しみ合う心が 生まれる。

その一方で、他人との出会いは尊く、他 者との絆が紡がれる瞬間の喜びは、ひと しおである。

それをよくわかっていたからこそ、菜月 は翔子の再婚に理解を示そうと思った。

だが、どうしても、メイの立場を含めて 考えると、理不尽な世の中だと思えてな らなかった。

菜月はソファーに座り、

「いつまでも、過ぎたことを責めても仕 方ないのは分かってるのよ……」

と、悔しげにロングスカートの上から太 ももを掴んだ。

「でも、どうしても、メイが不憫(ふび ん)でならないわ。

あの子はいまだに、夜、悪夢にうなされ ているでしょう?」

「そうだね……。

ぐっすり眠れる日もあるみたいだけど、 それも長くは続かない。

今日、友達の家で、ちゃんと眠れてると いいんだけど……」

ミズキは菜月に同調しつつ、教授・笹原 のことを口にした。

「近いうちに、メイを笹原先生に会わせ たいなって思ってる」