幸せまでの距離


やや冷え込む春の22時。

ここ、星崎家のリビングも、寒さを防ぐ ためにゆるく暖房が入っていた。

ミズキと菜月は、短足テーブル前のソ ファーに腰をおろし、近頃よく庭に入っ てくる白猫について話していた。

さきほどメイから連絡を受けたミズキ。

「メイ、今日は友達の家に泊まるって」

菜月へそんな報告をしたことから、話題 は白猫のことに変わった。

メイとの電話で、ミズキは彼女に話しそ びれてしまったことがある。

今日の夕方にも、白猫達は星崎家の庭に やってきて、メイを探しているように、 しばらくの間芝生の上をうろついてい た。

「メイ、あの猫のこと気にしてたもの ね」

菜月は言い、ソファーから立ち上がる と、カーテンを開けてすき間から庭を見 遣る。

今はもう、白猫親子の姿はない。

メイがいないことを察したのだろうか、 猫達は1時間ほど庭に留まった後、さす らいの旅人のような雰囲気をまとい、ど こかに行ってしまった。


「メイ、あの猫を育てたいって言ってた よ。

そのために、バイトを探してるって」

ミズキはリビングの新聞用ラックに挟 まっていた求人情報誌を手に取り、菜月 に見えるよう胸元で表紙をさらした。

メイはとても熱心にバイトを探していた のだろう。

ページの角には所々折り目がついている し、気に入ったのであろう求人には水性 ペンで書いたのだと分かる星印がついて いた。