幸せまでの距離



夜は深くなっていたが、二人はまだ寝そ うにない。

カナデはメイに、トウマとの思い出を話 し始めた。

「付き合ったばかりの頃、トウマにケー キを焼いてあげたことがあって。

その場の思いつきで雑に作ったから、特 別凝った物でもなかったのに、トウマ、 すごい喜んでくれたんだよね」

カナデは、メイのように、将来の夢を明 確に描いて専門学校に進んだわけではな かった。

ただ、カナデは昔から結婚願望が強く、 それはトウマとの交際で具体的な未来像 となった。

トウマには夢があり、カナデもそれを応 援していたので、結婚したいと口には出 さなかったが、漠然と花嫁になる自分の 将来を想像していた。

トウマと結婚し、いつか母親になる自分 の姿を。

いつか、トウマを喜ばせるような菓子を 作れるようになりたいと思い、カナデは 今の専門学校を選んだのだった。


最近ではトウマのアパートに出向くのが カナデの日課になっている。

だが、付き合い出したばかりの頃、トウ マはよく、ここ・生駒家にやって来て、 カナデの部屋に泊まっていくことも しょっちゅうだった。

カナデの家は、基本的に両親が留守がち で、家事や家の管理全般は、何人かの家 政婦にローテーションで任せている状態 である。

家政婦達はカナデと顔を合わせても、彼 女の交友関係や普段の行動に干渉しない ので、未成年のカナデが自宅に彼氏を連 れてくることや、外泊の時間帯設定も、 カナデの意のままに決められた。