幸せまでの距離


ごまかすようにメイとの通話を終え、メ グルは気持ちを落ち着けるべく、深く息 を吐いた。

“こんなこと思いたくないけど、トウマ さん、何考えてるの……?”

仕事帰りに、トウマに待ち伏せされた日 のことを思い出し、メグルはただならな い気持ちになった。

彼はたしかに、カナデよりメグルを選ん だ。

うぬぼれかもしれないが、メグルはこう 考えた。

あんなに自分を好きになってくれたトウ マが、風俗を辞めたカナデと付き合い続 けるのには、何かしら打算的な理由があ るのではないか、と……。

“トウマさん、言ってたよね……。

夢を叶えるためにカナデちゃんを利用し てるだけだって。

あたしと付き合えるのなら、カナデちゃ んと別れるって。

そうやってキッパリ切れるのも、カナデ ちゃんに対する恋や愛が、完全に消えて るからだ、って……”

乱暴な言い方をしてしまえば、トウマに とって、風俗を辞めて大幅に収入の減っ たカナデには、利用価値が無いはずだ。

だったらなぜ、トウマはカナデと付き合 い続けている?

もちろん、二人のヨリが戻るのはメグル の希望でもあったので、本来なら嬉しい ことのはずである。

けれども、トウマの真意が見えない以 上、メグルは素直に現状を喜べなかっ た。

メイにもそれを話したかったが、今はと ても言えない。

メイは最近リクと別れたばかりで、口に は出さないが、内心傷ついているに違い ない……。

自分の憶測でメイに余計な心労をかけた くない、と、メグルは考えたのだった。

“この前は、あまり仲良くないって言っ てたけど、今メイは、カナデちゃんと仲 良くしてるみたいだし……。

トウマさん入れてこんな時間まで一緒に 遊んでるくらいだし、同じ店でバイトす るくらいだもんね。

カナデちゃんも、トウマさんも、考えが 変わったのかな?

……あたしの考え過ぎかもしれないし、 メイのことまで悩ませたくない。

いま、連休前で店もビミョーに忙しいか ら、あたしも疲れてんのかも”

前向きさが売りだったメグルは、トウマ 絡みのマイナス思考を仕事疲れのせいに した。