幸せまでの距離


「メイちゃん、これ混ぜて?」

小麦粉と生卵入りのボールをカナデに手 渡され、メイは我に返った。

「ああ、うん……」

今は、皆の快挙を祝うべく調理中であ る。

メイが作業に取り掛かると同時に、トウ マはキラキラ目を輝かせ、

「メイちゃん、翔子さんって、今は何し てるの?

結婚で引退したし、やっぱり、もう、専 業主婦とかになってる?」

「……翔子は」

言いかけ口がとまる。

メイの腕は、震えていた。

「一度、翔子さんに会いたいなぁ……」

トウマは翔子話に夢中で、メイの様子が おかしいことに気付かない。

カナデはメイの心情を察し、

「翔子さんはもう引退してるんだから、 いまさらファンには会わないと思うよ ~。

それより、トウマはもう、翔子さんの仲 間入りしたんだし、自分の立場をもっと 喜んだら?」

「ああ、そうだな!」

トウマはカナデの言葉で、自分の掴んだ 夢を実感した。

「今でも、まだ信じられない……。

俺、やっと翔子さんに追いつけたん だ……」