幸せまでの距離


思い出してみれば、メグルの存在だって 浮かぶ。

彼女もきっと、メイがバイトに受かった ことを喜んでくれるだろう。

けれども、やはり、何かが足りない気が した。

“私が、こんな風に思うなんて……”

適当な愛情をかけてもらえれば満足する と思っていたのに、愛情を求める心には 底がないらしい。

“周りから愛情をもらうことに慣れてし まったとでもいうの……?”

メイの考え事を飛散させたのは、カナデ の甲高い声だった。

「ウソ、ほんとに!?」

どれだけ声を上げても興奮がおさまらな いらしく、ついに彼女はイスから立ち上 がった。

「いつ?

うん、うん、ほんとに!?

すごいよ、トウマ!」

何の話をしているのかよく分からない が、メイは片手で頬杖をついて窓の外を 眺めつつ、カナデの声を聞いていた。

「私達も面接受かったし、みんなでお祝 いしよっか!

うん。あ、学校のコと一緒に受けたんだ よ。

……わかった!

またメールするね」

電話を切るなり、カナデはメイに抱き着 き、テンション高らかに言った。

「トウマね、来年やる舞台の主役に選ば れたんだって!

長年の夢が、叶ったんだよ!!

今まで端役(はやく)ばかりだったのに だよ!?

すごくない!?」

「よかったじゃん」

抱き着かれていることに照れ、メイはわ ざとそっけなく返した。

カナデはメイの反応を気にせず、

「でね! 急なんだけど、今日学校終 わったら、二人でトウマんち行かな い?」

カナデの提案で、今夜メイは、彼女と共 にトウマのアパートに出向くこととなっ た。

メイとカナデがそろってバイトに採用さ れたこと。

トウマの夢が叶ったこと。

それらを祝うために。