翔子は当時の輝かしい功績を思い出しつ つ話した。
「表現者の作品には、多かれ少なかれ作 者の経験がにじみ出る……。
保と付き合うことで、私は演技に幅を出 すことができたの。
周囲の目も、一段と変わった。
よく男性芸能人が、『女遊びは芸の肥 (こ)やし』って言ってるけど、あなが ち間違いだとは思わないわ。
私は、保の気持ちを利用してた……。
恋愛するフリをしながら、夢を叶えるた めの踏み台にしていたのよ。
だから、こういう結果になって当然だっ て、今なら思える。
メイと住んでいた頃、何人かの男に裏切 られたりもしたし、それも、自分のした ことの報いだって、ね」
振り返ると、他人を利用してばかりの人 生だった翔子。
「いま、幸せなんですね……」
「ええ……」
翔子の顔を見て、リクはそれしか言えな かった。
以前の翔子相手にだったら責める言葉が いくつも思い浮かんだのに、現在の彼女 と話してみると、とてもそんな気にはな れなかった。
それに、今はそんな破壊的なことに時間 を割いている場合ではない。
メイの心を知る手がかりをつかんだこと に対し、物事が前進した喜びなどなく、 悲しみに近い罪悪感のような、表現でき ない感情がリクの胸に湧いていた。
翔子に対し感情的な受け答えができな かったのも、そのせい――。
「それでも、リク君は保に会うの?」
「はい。今の話を聞いて、よけいにそう しなくちゃと思いました。
教えてください」
「それはいいけど、メイがそれを望むか しらね。
それに、あの人は今……」
翔子はリクに、保の住所と現在の状況を 教えた。


