「あ、うん……」
リクは呆気(あっけ)に取られて彼にそう返事をする。
「…………」
リクと同じ南高校出身の男子かと思ったが、高校時代、他のクラスにもこんな人はいなかった。
たまたまリクが立っていた席の隣に座り、彼は言った。
「座ったら? もうすぐ式始まるし」
「うん……」
リクは怪訝(けげん)な顔で彼の隣に座った。
彼は長すぎず短すぎない茶色の髪をやや立てるようにセットしている。
男性にしては線が細く、どちらかというと文科系クラブに入りたがりそうな穏やかな顔立ちだ。
雰囲気は、ミズキと交際している東藤ナナセ(とうどう·ななせ)に似ているが、違う。
穏やかな顔つきに反して切れ長な目と落ち着いた口調だからか、裏では悪いことをやっていそうなイメージもある。
リクは、性犯罪を軽く考えている男子学生たちに怒りを覚えていた。
抗議しようと彼らに話しかけるのを初対面の彼に止められ、たまらなく居心地が悪かった。
ムスッとした顔でうつむいていると、彼はリクの心情に気付いたのか、こう話しかけてきた。
「見た目によらず、ケンカっ早いんだね」
「だってさ……! ああいうのって許せないじゃん!
そう思わない!?」
リクはたまらず語気を強め、彼に同意を求める。


