幸せまでの距離


「リク君の目に、あの人はどんな風に 映ってたのかしら?」

翔子はリクに、保の印象を尋ねた。

「優しい人だと思ってました。

今でも、そういう記憶は変わりません。

メイのことも可愛がってましたし……」

「それが表向きの顔だとしたら?」

「え……?」

心音がじょじょに早くなる。

リクは、かたく閉じた拳の中に汗が流れ るのを感じた。

「リク君。私は、保の弱みをにぎってる も同然。

保の両親は、私にそれを口外されたくな くて焦ってるのよ。

だからこそ、私に養育費を送り続けてく れた」

「弱みって、何です?

おじさんは、必死になって隠すほど何か 悪いことでもしてたって言うんです か?」

「……まあ、そうね。

間違いなく、あの人のしたことは犯罪 ね」

ツバを飲み込み、リクは翔子の言葉を 待った。

「もう少し大人になったらリク君にも分 かるでしょうけど、セックス無しの結婚 生活じゃ満足できない男性も多いのよ」

「いきなり、何ですか……?」

思ってもみない話題変化に、リクはのけ ぞる。

一方、翔子はいたって落ち着いていた。

「リク君もよく知る通り、私は母親と呼 ぶにはふさわしい女ではなかった。

だからこそ保は、私に愛想をつかして いった。

昔メイも感じてただろうけど、私達夫婦 は、離婚するずいぶん前から会話などし ない、冷めきった関係になっていた。

無理して話すと決まって揉めるだ け……。

私はそれにますますイライラしてメイに 当たってたけど、あの人はメイを可愛 がってた。

メイも、私には怯えてたけど保にはなつ いてたしね……」