リクと翔子は、出会った交差点から数分 歩いた先の駅ビルに来た。
飲食店や雑貨屋が並ぶ雑然とした通路を 抜けると、寂れた喫茶店がある。
二人は、極めて客の少ないその喫茶店に 入ることにした。
出入口から見て最奥のテーブル席に向き 合って座る。
翔子はタバコを出そうとしたが、リクの 手前吸うのはやめた。
「リク君、未成年だものね」
心なしか、よく知る翔子とは思えないほ ど彼女の顔つきは穏やかで、リクは目を 疑った。
「今の旦那はメイのこと知ってるけど、 それがらみの人と関わってるってことは 知られたくないの。
こんなとこまで連れ出してごめんね」
「いえ……。大丈夫です」
戸惑いがちに返すリク。
注文した飲み物が運ばれてきた後、リク は両手を強くにぎりしめ翔子に尋ねた。
「おじさん……メイの実の父親の居場所 を知ってますか?」
「保の居場所?
……そんなの知って、どうするの?」
「知ってるんですね。
教えて下さい。
メイを、おじさんに会わせたいんです」
翔子は目を見開くと瞬きをした。
リクの言葉で動揺した気分を紛らわすよ うに、目の前で湯気を立てるブラック コーヒーを口にする。
「……教えるのは構わないけど、会わせ ることに何の意味があるのか分からない わ」


