幸せまでの距離


「いきなりすみません。

ずっと、待ってました」

リクは翔子を見て言った。

「訊きたいことがあります。

場所変えて話しませんか?」

「私には話すことなんて何もないわ」

リクの表情からメイに関する話だと察し た翔子は、逃げるような目でリクの手を 振り払う。

彼女の左手薬指に、真新しい指輪の輝き を見つけたショウマは、冷ややかな声で 言った。

「何の代償もなく幸せになれると思った ら大間違いですよ。

メイちゃんに対して少しでも悪いと思う なら、リクに協力してあげたらどうです か?」

「……」

翔子はリクとショウマを交互に見遣る。

大勢の人が、三人をよけるように流れて いった。

今年の春に再婚した翔子。

出来ることなら、もう過去を振り返りた くはなかったが、新しい幸せに身を置い て初めて、メイを愛せなかった自分に罪 深さを感じていた。

ゆえに、ショウマに言われた言葉が重く のしかかる。

かといって、メイに再会したいとは思わ ないけれど、リクと話すことには納得し た。

「そうね……。

あまり時間はかけられないけど、答えら れることには答えるわ。

私はそれだけのことをしたものね」

すんなり聞き入れてくれた翔子に違和感 を覚えつつ、リクは引き締まった顔で ショウマを伴い移動した。

「俺は部外者だし、今日は帰るわ。

また、どうなったか聞かせて」

ショウマはリクにそう耳打ちし、リクと 別れた。

翔子に気を使ってのこと。

“俺がいたら、話せることも話せないだ ろうしな……”