「うん……。そうだな」
今まで築いたメイとの関係を胸に、リク はショウマの言葉に納得した。
子供を産める性別かどうか。
結婚できる間柄かどうか。
それ以前に、大切なことは山ほどある。
好きな相手と、心が通じ合わなくなって しまったら、最後。
ショウマは言った。
「結婚生活の中で、翔子さんがもっとも 大事にしてたのは、自分自身だけだと思 うよ。
メイちゃんを可愛がれなかったのは、旦 那さん……メイちゃんの父親を嫌ってい たからじゃない?
『人間にとって最大の幸せは自由でいら れることだ』って言う人もいるくらいだ し。
翔子さんにとって、結婚生活は不自由な ものでしかなかったのかも。
ま、勝手な推測だけどさ」
「……あ!」
ショウマの話に耳を傾ける一方でリク は、数メートル先に翔子の姿を見つけ た。
こんなに早く会えるとは思っていなかっ たので、喜びと同時に妙な動悸に見舞わ る。
人と人の間をすり抜けるように過ぎ去 る、細い影。
あれは確かに、メイの母・翔子だ。
辺りを包む雑音が消え、心音が耳に鳴り 響く。
「待って下さい……!」
すれ違う人にぶつかるのも気にせず、リ クは遠ざかる翔子の後ろ姿を夢中で追い かけた。
ショウマもリクに続く。
「……!」
突然腕をつかまれ、翔子は勢い良くそち らを振り返った。
相手の腕をたどり、肩に視線を移し、顔 を見る。
「リク君……!」
もう二度と会うことはないだろうと思っ ていた娘の幼なじみが、そこにいた ――。


