幸せまでの距離


講堂に着くと、リクは適当に空いている場所に座り、辺りを見回した。

もう、5~6人の男子グループが出来ている。

どうやって仲良くなったのだろうと不思議に思いながら、リクは彼らと友達になりたくて会話に混ざろうとした。

しかし、彼らの話し声が聞こえた瞬間、リクは足を止め口をつぐむ。

「この大学、前にレイプ事件あったの知ってるー?」

「ああ! つーか知らないヤツいんの?

2個上の先輩だろ? サークルの飲み会で酔った女狙ったんだよな」

「俺らも、サークル入ったら先輩とかにそーいうの誘われたりして!」

「面白そうだけど、んなことで退学とか放学になんのはカンベンかもー」

リクは両手に力を込めて、怒りを我慢した。

弁護士のフリをした宇都宮の存在を思い出し、こめかみには血管が浮き出る。

“こいつら、腐ってる!

女の人を何だと思ってんだ!”

我慢できず彼らにつかみ掛かろうとすると、後ろから強い力で右肩を引かれた。

「隣、座っていい?」

静かな問いかけでリクの意識を引いたのは、中性的で大人びた顔立ちの男子学生だった。