幸せまでの距離


「カナデちゃんが辞めるなんて、キツイ なぁ~」

30代とおぼしき、いかつい顔の店長 は、外見に似合わぬフレンドリーな口ぶ りでカナデの退店を惜しんだ。

彼は、そばの出入口で佇むメイをまじま じと見て、

「そのコ、もしかしてここで働いてくれ るの?

カナデちゃんの代わり?」

と、嬉々とした声で尋ねた。

カナデはたしなめるように、

「店長、違いますよぉ。

このコは私に付き合ってココまでついて きてくれただけですだからっ」

「そうかぁ、残念だな~。

カナデちゃんも可愛いけど、そのコもい いなぁ。

たくさん指名来そう」

メイは、男に商品として値踏みされたこ とに不快感を覚え、

「こんな仕事、頼まれたってする気ない から」

と、毅然たる態度で言った。

店長は目を丸くした後ゲラゲラ笑い、

「君、見た目通り、気が強いね~。

カナデちゃんとは正反対だ」

と言った後、真摯(しんし)なまなざし てメイを見た。

「気分悪くさせてごめんね。

ここで働いてる女の子達のおかげで、性 産業は成り立ってる。

下品な言い方かもしれないけど、こうい う職種がなくなったら間違いなく性犯罪 が増えると思う。

だから俺は、カナデちゃんや店のコ達に は本当に感謝してるんだよ」

軽い口調だったが店長の言葉は真剣その もの。

それは、メイの胸に深く沈んだ。