幸せまでの距離


トラウマ体験の希薄化とは、何度

も苦痛を体験することで、

「昔のトラウマ体験は特別なこと

ではなかったのだ」

と、確信しようとする行為のこと

である。

どのように刺激感の溢れる経験で

も、繰り返し体験することでその

新鮮味は落ちる。

トラウマ体験の希薄化は、そう

いった人間心理の性質からくる自

己防衛本能といってもいい。

だが、トラウマ体験を繰り返す人

が、必ずしも心の傷の希薄化を望

んでいるとは限らない。

再びトラウマになるような体験を

重ねようとする時、

「以前と違う行動や反応をとっ

て、傷つく体験を避けられるかど

うか」

を、自らを実験体にして試してい

る場合もある。

そういう心理を《トラウマ体験の

精神的克服の試行》という。

過去のトラウマで生じた後悔や自

責の念を、トラウマ体験を回避す

ることで打ち消そうとしているの

だ。

これには、傷を負った時に感じた

圧倒的な無力感を克服するという

目的もある。