境界性人格障害は、多くの場合、幼少期の虐待や精神的ショックからなるといわれている。
わずかだが、家庭に何の不備もない者がなる場合もある。
メイの場合、幼少期の家庭環境が極めて悪かったことが、境界性人格障害を引き起こした可能性が大きい。
大学生活の傍ら、シュンはマナと共に図書館や書店に行き、犯罪被害者が受けた心の傷の癒し方を調べていた。
まだまだ先の話だが、卒業論文の内容もそういったテーマを元に書きたいと思っている。
そうやって調べ物をする中で、《境界性人格障害》の存在を知った。
「まだ掘り下げて調べる前だから、おおざっぱな説明になって悪いけど……」
知っている範囲で、シュンは話をした。
「境界性人格障害を持つ人は、周りと健全な人間関係を築けないっていう報告が多数寄せられてるらしいんだ。
人との付き合い方が、常に単略的で刹那(せつな)的。
自身の中から拭えない寂しさや孤独、トラウマが癒えないのを、周りの人達に甘えたり、逆に当たり散らすことで解消しようとする。
傷ついた経験しかないから、相手を思いやる方法が分からずに、関わる人に対して平気で暴言を口にする。
興味の対象は他人にはなく、いつも自分だけに向いてる」
境界性人格障害を持つ人は、自分の内にある苦しみや心の傷を、目の前の誰かのせいにしやすい。
だからこそ、周囲との人間関係も長続きせず、一瞬のものとなる。
長年、それを繰り返す。
もし、メイが境界性人格障害ではなかったとしても、彼女のように、幼少期に虐待を受けて育ったり大切にされた記憶の少ない人は、自分を大切にしてくれる人間を遠ざける傾向にある。
それどころか、自分を侮辱したり暴行を加えるような人間との付き合いを自ら選んで、トラウマ体験の希薄化を図ろうとする。
ミズキとマナは立ち止まり、夕焼
けににじむ廊下でシュンの話を聞
いていた。


