幸せまでの距離


翌朝メイは、清々しい気持ちで ベッドから抜け出した。

珍しく、嫌な夢も見なかった。

寝る直前、ミズキが頭をなでてく れたおかげかもしれない。


隣で寝ていたはずのミズキは朝食 の準備をしているらしく、もう、 いなかった。

シワのついたシーツを適当に直 し、着替えを終えるとカーテンを 開けた。

まぶしい朝日が、起きぬけのメイ の顔をまんべんなく照らす。

窓の外に広がる町並みは、今日も いたって平和そうだ。


メイは、幼少期のことを思い出し た。

母親に殴られた痛みで夜中眠れ ず、朝はスッキリ起きられない日 が続いていた。

幼稚園に行きたくない、もっと寝 ていたい、と、子供心に切実に 思っていた。

そんな朝でも、当時隣家に住んで いたリクは、元気いっぱいの表情 でメイを迎えにくるのだ。

『メイ! おはよう』

活気に溢れたリクを見ると、メイ はいくらか気力を取り戻せた。

そして二人は手をつなぎ、自宅前 まで送迎に来た幼稚園バスに乗 る。