幸せまでの距離


そのままカナデはうつむいてし まった。

ここに来る途中、別れのセリフを 色々と考えていたのに、いざ本人 を目の前にすると、うまく言葉が 出てこない。

さよならにつながる言葉を口にす るたび、トウマと付き 合ってきたことや、その時の恋愛 感情を自分で否定しているよう で、悲しくもあった。

出来ることなら、このままトウマ にフラれて楽になりたい。

フラれれば、あきらめがつくかも しれない。

好きな人に対し自分の口から別れ を告げるのは、想像以上に苦し かった。


この場でトウマと別れて、デート クラブの仕事も辞める。

カナデはそのつもりでいた。

「合鍵も、返すね。

もう、ここには来ないから」

カナデは震える手で合鍵をテーブ ルに置いた。

この部屋で過ごした時間を回想 し、涙がこぼれそうになる。

トウマは、頼りなげな彼女の手を にぎった。

「……メグルちゃんとは、もう会 わない」

「え……?」

カナデは、トウマと別れると決め て、ここへ来た。

そのために、合鍵に付けていた キーホルダーを外してきたという のに……。