幸せまでの距離


カナデは無言で、部屋の隅に座っ た。

トウマのいるテーブルには近づか ない。


こざっぱりした部屋の中で、時計 の針の音だけが妙に大きく響いて いる。


「話って?」

頬杖をついたままの体勢でトウマ は訊いた。

少し間を置いた後、カナデは言っ た。

「……私達、もう、別れよっか」

「え……?」

それまでカナデの方を見ないよう にしていたトウマも、勢い良く彼 女に向き直った。

トウマのケータイを使ってまで、 メグルに接近したカナデ。

そうまでして恋敵をこらしめよう とした彼女の方から、別れ話を切 り出すなんて……。

トウマにとっては意外なことだっ た。

「急に、どうしたの?」

そう尋ねつつ、トウマの中で打算 が働いた。

カナデが居なくなったら、このア パートにも住めなくなる。

メグルとの関係が無くなってし まった今、カナデを突き放す理由 はない。

就職活動をする気力も失ってい る。