幸せまでの距離


幸い、ミズキの友人達の協力もあって、メイに被害が及ぶ前に宇都宮の正体を暴くことができたから良かったものの、

それ以来メイは、人間や大人に対する不信感をさらに強めることになった。

ミズキ達がいてくれるおかげでそういった傷もふさがりつつあるのかもしれないが、

メイはリクと一緒に過ごした春休み、会社帰りらしきサラリーマン集団を見てこんなことを言っていた。

「ずっと学生のままでいられたらいいのに。

汚い大人になんか、なりたくない。

大人はみんな汚いんだ。

見てるだけで気分悪い」

リクは悲しげな瞳で「そんな大人ばかりじゃないよ」と励ますのが精一杯だった。

宇都宮の悪行によって、メイの弁護士や大人に対するイメージは悪いものでしかなくなった。

リクは自分が弁護士になることで、メイの中に染み付いた弁護士への悪いイメージを取り除き、大人に対する見方も明るくしてあげたいと願った。